靴磨きに慣れてくると、鏡面磨き(ハイシャイン)をやりたくなりますよね。
今回は靴磨き歴10年超のぼくが、初心者向けの鏡面磨きのやり方を解説します。
鏡面磨き(ハイシャイン)とは
鏡面磨きは革靴の仕上げ方の1つです。
油性ワックスを使って革靴の表面を整えることで、鏡のように光を反射する強い光沢を与えます。
革靴への栄養補給などの効果はありませんので、お手入れとしてはやらなくても問題ありません。
現在行われている靴磨きの大会の多くは、鏡面磨きの速さと完成度を競うものです。
鏡面磨きの原理
皮の表面は毛穴などによる凹凸があります。
ワックスで凹凸を埋め、表面を平らに整えることで光沢を出します。
鏡面磨きをする場所
鏡面磨きを革靴全体に行うことはありません。主に下記の3か所に行います。
鏡面が磨きをする場所
- つま先
- カカト
- 側面
つま先
最もよく鏡面磨きされるのが革靴のつま先部分。
って人も多いです(ぼくもです)。
つま先が最も鏡面磨きされる理由
- 鏡面が割れにくい
- 磨きやすい
- 目立つ
革靴のつま先には型崩れ防止のための「芯材」と呼ばれるものが入ってます。これがあるのでつま先部分は折れ曲がりません。
従って、「磨いた後に鏡面がひび割れる」などのトラブルが起きにくいです。
そして場所・形的に磨きやすいですし、何より目立ちますよね。
カカト
カカトはつま先に次いで磨かれることの多い場所です。
つま先と同じく芯材が入っていて、鏡面が割れにくいのがその理由。
側面
つま先、カカト以外では革靴の側面も磨かれることがあります。
具体的には、上記の赤丸で囲った部分。
側面の下部、アッパーとソールとの境界部分を磨きます。革靴の内側・外側両方です。
この辺を鏡面磨きすることで、革靴に立体感が加わり見た目が美しく仕上がります。
鏡面磨きに必要な道具
油性ワックス
主役です。
今回は初心者でも鏡面にしやすいM.モゥブレイのトラディショナルワックスを使います。
オススメのワックスや靴クリームについては下記の記事も参考にしてください。
-
革靴の手入れに最適!オススメ靴クリームを目的別に厳選して紹介
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ポリッシングクロス(ネル生地)
最後に磨き上げるときに使います。
画像のような市販の物でもいいですし、裁縫店とかで売ってるネル生地を切って使ってもOKです。
馬毛ブラシ
最初にホコリを取り除くために使います。
水
磨き上げるのに使います。
水道水でOK。適当な容器に入れときます。
初心者でもできる鏡面磨きのやり方
ではここから鏡面磨きの具体的なやり方を解説します。
ちなみに鏡面磨きをすると、落とすまでしばらくの間は靴磨きができなくなります。
前回靴磨きをしてから時間が経っている場合、事前に靴磨きをしておいてください。
-
【初心者向け】圧倒的に正しい靴磨きのやり方【保存版】
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手順① 馬毛ブラシでブラッシング
馬毛ブラシでブラッシングし、細かいホコリを除去してください。
手順② 指でワックスを塗り、下地をつくる
いよいよここからワックスを塗っていきます。
指にワックスを付け、鏡面にしたい場所に塗ってください。
1回に指に取るワックスの量はこのくらい。「取る」というより指に「塗る」というくらいの量で十分です。
最初はワックスのおかげで塗っているときの指の滑りが良いです。
と思ったらワックスの足し時。先ほどと同程度の量を指につけます。
これを繰り返しながら、鏡面にしたい範囲をすべて塗り終わるまでやってください。
塗ったら2分程度待って乾かす
ワックスを塗ったら乾くまで待ってください。
待っている間に、別の場所やもう片方の靴にワックスを塗るとよいです。
乾いたら塗り重ねる、を何度か繰り返す
乾いたら再度ワックスを塗り重ねます。
先ほどのこちらの画像のように、ワックスを塗り重ねることで層をつくり凹凸をなくすことが目的です。
この写真だとわかりませんが、手で塗るだけでもわずかにツヤが出てきます。
手順③ ポリッシングクロスで磨く
ベースができたら、ポリッシングクロスで鏡面にしていきます。
指にポリッシングクロスを巻く
まずは指にポリッシングクロスを巻いてください。
ワックスを付ける指の腹部分にシワが寄らないように巻きます。
緩まないように、手の裏側などでこうして固定するといい感じ。
ポリッシングクロスを水で軽く湿らせる
ポリッシングクロスを水で軽く湿らせてください。
水が多すぎると鏡面にならないので、つけすぎには注意。
ポリッシングクロスを巻いてない方の手のひらに叩きつけて、水分を飛ばしながら調整してください。
革靴に水を1滴垂らし、ワックスをつけたポリッシングクロスで磨く
先ほど指で塗ったときと同じくらいのワックスをポリッシングクロスに取ります。
次に革靴のワックスを塗ったところに水を1滴落とします。
そしたら、ワックスを付けたポリッシングクロスで優しく磨いてください。
磨くときのポイント
- 円を描くように指を滑らせる
- 力を入れず、表面を撫でるように磨く
- 指に引っ掛かりを感じたら水とワックスを追加
ポイントは上記の通り。
円を描くように指を動かしてください。その際、力を入れず表面を撫でるように動かすのがコツです。
指に引っ掛かりを感じたら、ポリッシングクロスに水とワックスを追加しましょう。
好みの鏡面になるまで繰り返す
- 乾かす
- 水を1滴落とす
- ワックスを付けたポリッシングクロスで磨く
ベースづくりと同じく、これらの工程を繰り返してください。
手順④ 水だけで磨く
仕上げにワックスをつけずに水だけで磨きます。これを「水研ぎ」と言ったりします。
ポリッシングクロスのキレイな面が当たるよう、巻きなおしてください。
先ほどと同様、クロスを軽く湿らせたら上の画像のように鏡面部分に水を1滴落とします。
後はワックスの時と同様に磨くだけです。
完成
つま先の鏡面の中に、微妙に部屋の風景が映り込んでますね。
比較してみましょう。向かって左(右足)だけ鏡面磨きをしています。
割と違うのがお判りいただけますでしょうか。
おまけ:ヤギ毛ブラシで仕上げ
山羊毛ブラシの使い方
- 山羊毛ブラシにほんの少し水をつける
- 手のひらで水を全体になじませる
- 革靴の表面を撫でるように優しくブラッシング
使い方としてはこんな感じ。ブラッシングすることで鏡面磨きの境界にグラデーションがかかり、キレイに仕上がります。
ただししょぼいヤギ毛ブラシは逆に鏡面に傷が付きます。毛が固いからです。
繰り返し使ってると徐々に毛が柔らかくなって傷がつかなくなりますが、多少時間がかかります。
ヤギ毛ブラシを使うなら
- いいやつを買う
- 時間をかけて育てる
のどっちかが必要と覚えておきましょう。
初心者でも鏡面磨きを上手に仕上げるコツ
鏡面磨きは正直、かなり慣れが必要。
最初はうまくいかない方も多いと思います。
ぼくがこれまで鏡面磨きをしてきた中で感じた、上手に仕上げるコツをご紹介します。
コツ① ベースづくりが超重要
鏡面磨きはベース作りがすべてといっても過言じゃない。
とにかく薄く塗る
革の凹凸をワックスで埋めるというのが鏡面磨きの原理。
ワックスを厚塗りすると、ワックスの表面に凹凸ができやすくなり逆効果です。薄く塗るのが完全に正解。
ちゃんと乾かす
ワックスには有機溶剤が含まれています。
ワックスが完全な個体にならず、手に塗りやすいペースト状をキープしているのは有機溶剤のおかげ。
ただ、鏡面になったワックスを思い出してください。
そう、鏡面にするためにはワックスを乾かして固体にしないといけません。
ワックス内の有機溶剤を揮発させる十分な時間を確保して、しっかり乾かすとうまくいきやすいです。
ワックスを塗ったら、十分に乾かしてから塗り重ねてください。
力強く塗る
ベースをつくる際、ワックスを塗る指に力を込めて押し込むように塗ると鏡面がキレイに仕上がるように感じてます。
毛穴にワックスを押し込んで塗り固めるイメージです。試してみてください。
専用の道具を使うのもあり
ブートブラックが鏡面磨きのベース専用に「ハイシャインベース」という商品を販売してます。
でも評判は悪くないみたいなんで、どうしてもうまくいかない方はそういった専用商品を使うのも1つの手だと思います。
コツ② あらかじめワックスを乾かしておく
ワックスは購入当初、湿って柔らかい状態になっているものが多いです。有機溶剤がまだ全く揮発していないためです。
上で解説したとおり、ワックスはある程度乾いてる方が鏡面にしやすい。
1~3日程度蓋を開けて放置し、少し有機溶剤を揮発させると成功率が上がります。
軽く表面がひび割れするくらいにしておくとうまくいきます。
コツ③ 水をつけすぎない
ポリッシングクロスで磨く際の
- クロスにつける水
- 革靴に落とす水滴
これらの量には十分に気を付けてください。
たくさん水をつけすぎると、革が水を吸いワックスが全く乗らなくなります。
ちょうどいい水の量
- クロスは軽く湿る程度
- 革靴には1滴だけ落とす
コツ④ 最初はハンドラップを使わない
靴磨きの動画とかで、こういうのから水を取って磨いているの、見たことありますよね。
今は水じゃなくウィスキーが入ってますが。
これ「ハンドラップ」って言います。
カッコいいんですが、初心者のうちは使用NG。
最初は1滴ずつ垂らしていった方が、水分量をコントロールしやすいのでうまくいくと思います。
コツ⑤ 水の代わりにウィスキーで磨く
水の代わりにウィスキーを使うとやりやすいような気がします。
ちなみにぼくは常にウィスキーで磨く派。
理由は
- 鏡面磨きに失敗しにくい(気がする)
- 香りがいい
- ハンドラップに入れっぱなしでも大丈夫(な気がする)
って感じ。
コツ⑥ 塗る範囲を見定める
革靴にシワが入るような場所を鏡面にすると、後で鏡面が割れてしまいます。
こんな感じ。
例えばストレートチップとかでも、トゥ全体を鏡面にするのではなく、ある程度余裕を持つと良いです。
コツ⑦ 鏡面にしやすい靴を買う
元も子も無いかもですが、鏡面にしやすい靴を買うとうまくいきます。
鏡面にしやすい革靴の特徴
- 色は黒
- キメの細かい革を使っている
- 鏡面にすべき範囲が明確
色は黒
色が濃い靴の方が、鏡面がキレイに見えます。
明るい色の革靴は無色のワックスを使うわけですが、革靴自体の色も相まって鏡面を感じにくいです。
キメの細かい革を使っている
これマジ話なんですが、高級靴ほど鏡面にしやすい。
鏡面磨きの原理的に、毛穴など表面の凹凸が少ない革の方が成功しやすいですから。
高級な靴はキメの細かい良質な革を使っているので、必然的に鏡面磨きしやすいです。
鏡面にする範囲が明確
例えばプレーントゥの革靴は鏡面にする範囲が不明瞭なので難しいです。
キレイにグラデーションをかけないとセロハンテープ貼ったみたいになります。
- ストレートチップ
- パンチドキャップトゥ
こいつらはやはり鏡面にしやすいですね。逆に
- プレーントゥ
- Uチップ
- セミブローグ、フルブローグ
こいつらは、鏡面にすべき範囲が狭かったり穴飾りにワックスが入り込んでしまったりと、初心者は苦労することが多いです。
番外編:仕上げにミラーグロスを使うと簡単にキレイに仕上がる
手順③のポリッシングクロスで磨くときに、サフィールノワールのミラーグロスを使うと簡単にキレイに仕上がります。
ミラーグロスは固めのワックスなので、ベースは作りにくいです。でも仕上げは神ってる。
- 左(右足):
トラディショナルワックスのみ - 右(左足):
ベースはトラディショナルワックス、仕上げはミラーグロス
全然違うのわかりますかね。ミラーグロス、圧倒的にオススメ。
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革靴の手入れに最適!オススメ靴クリームを目的別に厳選して紹介
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鏡面磨きを落とす頻度は1か月に1回くらい
厳密に言えば靴磨きをするたびに落とすってのが正解です。
鏡面磨きをすると革をワックスでコーティングした状態になります。これでは革に必要な栄養分を補給できません。
したがって、靴磨きの際には鏡面を落とす必要があります。
靴磨きの頻度
- 10回履く
- 前回磨いてから3か月経過
のどちらか早い方
これが靴磨きの頻度。革靴を3~4足くらいしかもっていない場合、だいたい1か月もあれば10回くらい履きますよね。
完全に落とす前なら傷ついても塗り重ねればOK
満員電車で踏まれるなど、普通に履いてると必ず鏡面に傷が入ります。
完全に鏡面を落とす前なら、ワックスをそのまま塗り重ねれば傷を埋めてキレイにすることができます。
こんな感じで、傷部分をワックスで埋め立ててさらに層を重ねればOK。
まとめ:鏡面磨きは自己満足。でもそれがイイ。
鏡面磨きなんてやらなくても革靴は履けます。
ぶっちゃけ他人の履いてる靴に興味を持つ人は稀。完全なる自己満足と言ってもいいでしょう。
靴磨き沼の仕組み
- 革靴を鏡面にしてピカピカにする
- 履いて出かけるのが楽しみになる
- ピカピカの靴を履いて出かけると気分が高揚する
- また靴を磨きたくなる
- 以下、無限ループ
ぜひ鏡面磨きにチャレンジして、お手元(足元)の革靴をピッカピカにしてあげてください。
ちょっと宣伝革靴紳士にAmazonプライムは必須って話
革靴紳士なら「ああああああこのクリーム使ってみたいぃぃ」とか「中華料理屋で油垂らしちまったぁあ゛」とかあると思うんです。
そんな時、Amazonプライムに加入してさえいれば、必要なケア用品が早くて翌日に手に入りますからね。
他にも
Amazonプライムのその他メリット
- Prime Musicでジャズ聴きながら靴磨き
- Prime Videoで映画流しながら靴磨き
- Prime Readingで靴&服の情報収集
こんな使い方ができまして、紳士としては必須の嗜みです。まだ加入してないって少しキツイので、まだの方はぜひご検討ください。今なら30日間の無料体験が付いてくるので、(ありえませんが)万が一気に入らなければその間に退会すればOKです。