ヌメ革の財布を買おうと思ってるんだけど、メンテナンスって必要なの?
革はお手入れが大切ってよく聞くけど、よくわからん


ヌメ革は最高の素材ですよね!キレイに育てるにはプレメンテが最重要です!
というわけで、ヌメ革製品のプレメンテと、普段のお手入れに付いて紹介していきます。
ぼくは革靴を始めとする革製品が大好きで、1〜2週間に1度は何かしらの革製品のお手入れをしています。今じゃ完全に趣味ですね。
そんなぼくも、昔はあまり革のお手入れに興味がなくてですね・・・。
奥さんから初めての誕生日にもらったヌメ革の財布は、あまりキレイにエイジングできませんでした。後になって後悔したものです。
本記事を読んでヌメ革の手入れをすれば、ぼくと同じ後悔をしなくて済みますよ!
ヌメ革は最も経年変化が楽しめる上級者向け素材


まずはヌメ革の基本を押さえましょう
お手入れの基本は素材を知ることから。
ヌメ革がどんな素材か、簡単に解説していきます。
ヌメ革はタンニン鞣しされた革の総称
まず「ヌメ革」はタンニン鞣しされた革の総称です。
動物の「皮」を「革」にするための工程を「鞣し(なめし)」といいます。
鞣し方には様々な種類があるのですが、ヌメ革はその中でも、植物由来成分の「タンニン」と呼ばれる成分が使われているということです。
というわけで「ヌメ革」は特定の動物の革を指すわけじゃありません。
ただし市場に最も多く流通しているのは牛革です。普通に手に入るヌメ革アイテムは、その多くが牛さんだと思えばOK。

本記事でも「牛革のヌメ革」を前提に解説しています
ヌメ革の最大の魅力は美しい経年変化!
ヌメ側は「生成りの革」とも呼ばれ、革そのもののナチュラルな風合いを残しています。
購入当初は以下のような、薄ピンク〜ベージュといったシンプルな色合いです。

これは彩色をしていないため。
革の素材となった動物の血管や毛穴、生きているときに付いた傷跡やシワなどがそのまま見て取れるヌメ革アイテムもあるほどです。
そしてヌメ革は最低限のオイルしか含んでいないため、外的な要因でその見た目が大きく変化します。

上記画像はぼくが使っている無印良品のヌメ革名刺入れ。最初に紹介したのと全く同じ商品ですが、もとの薄ベージュから濃い茶色へと、かなり見た目が変わってますね。
これでもまだ若い方でして、使い込めば徐々に飴色になっていくはずです。
このような変化を「エイジング(経年変化)」と呼びます。
よく「革製品は使い込むほどに味が出る」と言いますが、この「味」の部分を左右するのがエイジングです。
ヌメ革はあらゆる革の中でトップクラスに経年変化が大きい革。
革を愛する人ほどエイジングが大好き。革製品が好きな人にヌメ革好きが多いのは、ヌメ側がエイジングしがいのある革だからです。

ヌメ革のエイジングに興味のある方は、インスタの #ヌメ革 ハッシュタグを見てみると良いですよ!
ヌメ革はぶっちゃけ上級者向けの革
財布などヌメ革を使った革製品はたくさん売ってます。それをお店で見てると、店員がこんな感じで声をかけて来ます。
「使えば使うほど味が出る!!」
「丈夫なので一生モノです!!」
「財布だから手入れも不要!!」

これは大間違いです
普通のアパレルショップやセレクトショップには、革の手入れについて詳しい人はほぼいません。
間違いなくヌメ革は上級者向けの素材と言えます。
先ほど解説した通り、ヌメ革は非常にシンプルな革でして、以下のような特徴があります。
- 水シミができやすい
- 油シミができやすい
- 汚れやすい
例えばヌメ革の財布を持ってラーメンを食べに行くじゃないですか。
財布を置いたテーブルがコップの水滴で濡れてたら、簡単にシミができます。ラーメンの汁が飛んだら、簡単にシミができます。手が汚れた状態で財布を持つと、簡単に汚れが移ります。
こうしてできたシミや汚れもう二度と落とせないと思ってください(目立たなくすることはできます)。
このようにヌメ革はちょっとした刺激ですぐに変化するので、知識が無い方が使うとすぐに汚れて悲惨な状態になってしまうんです。
それに気づかず、ただの「汚れ」を「味」だと勘違いしている初心者が本当に多い。
初心者ほどヌメ革はプレメンテすべき3つの理由

プレメンテとは「使い始める前に買ったばかりのものをメンテナンスすること」です。
ぼくは断言します。

ヌメ革はプレメンテこそ全て
こう考える理由は以下の3つ。
ヌメ革をプレメンテすべき理由
- 水や油に強くなる
- 汚れがつきにくくなる
- ムラ無くキレイに仕上がる
プレメンテすべき理由① 水や油に強くなる
先ほど書きましたがヌメ革はすぐに水や油を吸ってシミになります。
プレメンテは言わば水や油を正しく補給する作業。
これをするとヌメ革の表面が薄い油でコーティングされた状態になり、余分な水や油を吸い込みにくくなるんです。

ちょっとした油断からシミができるのを防ぐ効果が期待できます
プレメンテすべき理由② 汚れがつきにくくなる
余分な水や油を吸い込みにくい、つまり汚れにくくもなります。
プレメンテをしっかりしたヌメ革は、ちょっとした汚れがついてもすぐに拭き取ればOKです。
特に初期のヌメ革は薄くてシンプルな色合い。ちょっとした汚れもすごく目立ちます。

プレメンテすれば、使ってすぐ汚すのを高確率で防げます
プレメンテすべき理由③ ムラ無くキレイに仕上がる
汚れないように大切に使っても、手の皮脂や汗の水分を吸うのは防げません。
プレメンテせずに普通に使うと、それが原因でどうしてもエイジングにムラができます。
で、一度できたムラはもう戻せません。

プレメンテをすれば最初に均一な状態でスタートできるので、最終的にもキレイにエイジングできます
「プレメンテなど不要」は上級者のセリフ
プレメンテをしなくても、上手に使えばキレイにエイジングできます。上記で説明した「ムラ」だって、自分が使ったことでできた「味」です。
ムラのない均一な経年変化なんてつまらん、という人もたくさんいます。
ですがプレメンテせずにヌメ革をうまくエイジングできるのは一部の上級者だけです。

左のほうが好きということであれば、プレメンテしなくてもOK。

ただし多くの方はプレメンテした方が満足できると思いますよ
使う前のお手入れが最重要!ヌメ側のプレメンテのやり方


いよいよヌメ革のお手入れ方法を解説します
まずはプレメンテからです。以下の手順で行います。
ヌメ側のプレメンテ
- 馬毛ブラシでブラッシング
- 革用クリーナーで汚れ落とし
- 乳化性の革用クリームで保湿
- 窓際で日光浴、交互に保湿する
- ニートフットオイルの塗り込み
ヌメ革のプレメンテに必要なもの
実際の手順に入る前に、プレメンテに必要なものを紹介します。
- 馬毛ブラシor化繊ブラシ
- 乳化性クリーム
- 革製品用クリーナーと布
- ニートフットオイルと布
馬毛ブラシ or 化繊ブラシ

必須です!!
馬毛ブラシは馬の毛でつくられたブラシ。化繊ブラシは化学繊維でつくられたブラシ。
どちらも革製品に付着した細かいホコリを除去したり、革表面の繊維を整えるのに使います。
化繊ブラシに比べて馬毛ブラシは柔らかく、天然素材のためクリームを吸って育ちます。育った馬毛ブラシは、ブラッシングするだけで革製品が光るようになります。
革製品好きなら、1本は持っておきたい必須アイテムですね。
対して化繊ブラシは「育つ」といった楽しみは薄いですが、人工的に作られているので安くても品質が安定しているのが最大のメリット。
どちらを買うかは予算で決めればOKです。
- 〜1000円台
→ 化繊ブラシがおすすめ - 2000円台〜
→ 馬毛ブラシがおすすめ
化繊ブラシならM.モゥブレイの化繊ブラシがオススメです。
正直、化繊ブラシってあまり差がつきにくいんですが・・・シューケア用品最大手だけあり、モゥブレイのブラシは品質が安定してて長く使えます。
馬毛ブラシならサノハタブラシがオススメです。
日本製だけ合って丁寧なつくり。持ち手が手に馴染むようになっており、すごく使いやすいです。1本あれば一生使えます。
乳化性クリーム

できればあったほうがいいです
革製品に必要な水分と油分を同時に補給するクリームです。
ぼくのオススメはコロニルの1909シュプリームクリームデラックスの無色。
革靴に使われることが多いクリームですが、革製品なら何にでも使えます。無色なら色も気にしなくてOK。
乳化性クリームとしてトップクラスの品質を持っていて、革に適度な水分と油分を補給できます。
品質・エイジングに定評のある革製品メーカー「ココマイスター」でも、お手入れにこのクリームを使っているそうです(直営店の店員から聞きました)。
革製品用クリーナーと布

できればあったほうがいいです。汚れとか気にならないなら無くてもOK
革製品の汚れを落とせるクリーナーと、それを塗るための布です。
革製品は工場からの出荷〜店舗にある間は、基本的に全く手入れされてません。
その間に目に見えない汚れがたくさんついてますので、一度クリーナーで汚れ落としをすると良いです。
ぼくのオススメはこちらも革靴用として売られている「ステインリムーバー」。
水性なのでヌメ側に余分な油分を吸収させません。それでいて汚れ落とし能力が抜群に高い。
これ1つでだいたいの革製品をカバーできますし、ほとんどの汚れに対応できます。
これを塗るための布は何でもいいです。着古した綿100%のTシャツの切れ端とかが最高ですね。
ニートフットオイルと布

これを使うかどうかは好みです
この後の解説を読んで、準備するかどうか決めてください。
ニートフットオイルは日本語?では「牛脚油」といいます。牛さんの足から取れた油です。
天然素材である革と抜群に相性が良いことが特徴。
ヌメ革に使用すると、ある程度エイジングが進んだのと同様の状態にしてくれます。

ぶっちゃけチートアイテムと言っていいです
こちらもクリーナーと同様、布に取って使います。着古した綿100%のTシャツは捨てずに取っておきましょう。
プレメンテの手順① 馬毛ブラシでブラッシング


必要なものが準備できたらプレメンテを始めます
まずは購入してきたヌメ革アイテムを馬毛ブラシ(または化繊ブラシ)でブラッシング。
革製品に付着した細かいホコリなどを取り除きます。
細かく手を動かして「シャカシャカ」ってするより、大きく手を動かして「サッサッ」ってやるのがコツです。
プレメンテの手順② 革用クリーナーで汚れ落とし


この工程は汚れが気にならなければ飛ばしてもいいです
革用クリーナーを少量布に取り、表面を撫でるように汚れを拭き取ってください。
・ クリーナーの付けすぎ
・ 拭き取り時の力の入れすぎ
これらは革を傷める原因になるので注意です。あくまで優しく。
プレメンテの手順③ 乳化性クリームで保湿する


この工程も飛ばしても大丈夫です。…が、やったほうがトラブルは防げます
革製品は購入直後が一番乾燥してます。
この後の日光浴の工程で更に乾燥するので、その前に一度クリームで保湿してください。ヒビ割れ等のトラブルを予防する効果が期待できます。
クリームを少量取って塗り込めばOKです。
布とかでやってもいいんですが、ぼくは指で直接塗ることを推奨してます。体温が伝わることで、革にクリームが浸透しやすくなります。
ちなみにクリームを塗ると、多少ヌメ革の色が変化して見えると思います。これはすぐに馴染むので気にしなくても大丈夫です。
プレメンテの手順④ 窓際で日光浴させて、交互に保湿する


この工程が一番重要。必ずやります
ヌメ革を太陽光に当てて、日光浴。
太陽光に当てることで革の内部&表面の油分が紫外線で紫外線し、徐々に日焼け。これで色ムラができにくい状態になります。

上記が日光浴前後の比較画像。日光浴前と比べると、かなり色が変わっていますね。
また日光浴により革の表面がコーティングされた状態になり、シミ・汚れに強くなります。
ここでツウイしたいのが、日光浴でヌメ革は急激に乾燥するということ。日光浴した日はなるべく、終わったら「手順① ブラッシング」と「手順③ 保湿」をしてあげてください。
日光浴をしたら保湿。翌日にまた日光浴。
これを繰り返して、上記の画像くらい日焼けしたら完了してOKです。
太陽光が強いほど早く変化。ただし保湿を忘れずに。
日光浴による変化は紫外線が強いほど早く進みます。
そのため、冬より夏のほうが有利。そしてもちろん窓際より外で直接のほうが有利。ただし
・ 乾燥しすぎてヒビ割れ
・ 変な汚れがつく
・ 雨に濡れる
こうしたトラブルを避けるため室内の窓際に置く方が無難でしょう。
雨や外部の汚れがつかないよう確実に管理できる&ブラッシングと保湿を絶対に忘れないという自身がある場合は、直接太陽に当てるのも良きです(ぼくはそうしてます)。
時間さえかければ日陰や蛍光灯でも大丈夫
ヌメ革の日光浴では紫外線さえ当たればいいので、置く場所は日陰でも問題ありません。
というか極端な話、蛍光灯でも紫外線は出ているので、室内に置いておくだけでも日焼けはできます。
ただし日陰・室内は紫外線の量が圧倒的に少ないので、かなり時間がかかります。
ブラックライトなど、紫外線が出る物を使えば室内でも効率よく日光浴と同じ効果が得られるはずです。
最近はUVライトなんかも普通にAmazonで売ってるので、日当たりの悪い場所に住んでいる方などはその方が良いかもですね。
※ ぼくはUVライトでヌメ側のプレメンテをしたことがありません。自己責任でお願いします。
プレメンテの手順④ ニートフットオイルを塗り込む


さっきの日光浴で終わってもいいんですが、好みの応じてこの工程もやると良いです
日光浴が終わった段階で、ヌメ革はもう使ってOKな状態になってます。
ただし「最初からもっと深くエイジングした状態にしたい」「汚れがつきにくくしたい」という場合はニートフットオイルを塗り込むと良いです。
布に少量取って、優しく塗り込むだけです。
塗った瞬間、以下の画像の通りヌメ革の色が一気に変わります。ビビると思いますが、もう戻れないので覚悟を決めて最後まで行きましょう。
ちなみに塗った直後は絶対ムラになると思いますが、大丈夫です。

ニートフットオイルは抜群に浸透力が強いので、時間をおくことで最終的に全体に馴染み、均一な色合いになります。
塗り終わったら、1〜3日ほど風通しの良い日陰で休ませてください。
以下はニートフットオイルを塗る前と、塗ってから一晩置いた状態との比較画像です。塗る前と比べて、若干ですが色が濃くなっているのがわかるでしょうか。


好みに応じて、ニートフットオイルの重ね塗りや追加の日光浴をしても良いですよ。より濃くなって、飴色に近づきます
ぼくの場合はここで完了。あとは自然に使いながら育成したいと思います。
プレメンテ前後のヌメ側を画像を比較

左はプレメンテ前、購入直後の状態。右がプレメンテ後(ニートフットオイルを塗布して一晩置いた後)の状態です。

別物かよってレベルで変化してますね
すでに解説しましたが、ヌメ革は左の状態だとシミ・汚れがつきやすくてなかなかキレイに育てるのが難しいです。
今回紹介したとおりプレメンテをしてあげることで、シミや汚れに強くなります。
右のように均一な状態から育成をスタートできるので、最終的なエイジングもキレイになりやすいです。
「プレメンテ後の見た目が嫌い」とかじゃなければ、ぜひ試してみていただきたいと思います。
ヌメ革の普段のお手入れの仕方


ぶっちゃけあまりやらなくても大丈夫です
上述のプレメンテさえしっかりやれば、あとはあまり手間がかかりません。
ヌメ革の普段のお手入れ
- 毎日〜週に1回ほど、馬毛ブラシ(化繊ブラシ)でブラッシング
- 1〜3ヶ月に1回ほど、乳化性クリームで保湿
このくらいで大丈夫かと。汚れがついたらクリーナーで拭き取ってください。
乾燥していると感じたら、多めの乳化性クリームでしっかり保湿すれば大丈夫。
またはデリケートクリームや油性クリームを買い足しても良いかもですね。
まとめ:ヌメ革はプレメンテさえすればキレイに&楽にエイジングできます
ヌメ側のプレメンテ
- 馬毛ブラシでブラッシング
- 革用クリーナーで汚れ落とし水性デリケートクリームで保湿
- 窓際で日光浴、交互に保湿する
- ニートフットオイルの塗り込み
ヌメ革の普段のお手入れ
- 毎日〜週に1回ほど、馬毛ブラシ(化繊ブラシ)でブラッシング
- 1〜3ヶ月に1回ほど、乳化性クリームで保湿

ヌメ革のプレメンテと、普段のお手入れの仕方について解説しました
繰り返しですが、プレメンテが全てです。
それさえキッチリやってれば、普段のお手入れは最低限でもOK。
毎日しっかりめに手入れするのって大変じゃないですか。なので、初心者ほどプレメンテをしたほうがいいと思いますね。
本記事で紹介したお手入れをしっかりやれば、お手元のヌメ革アイテムも素敵な飴色へと育っていくはず。
大事に使ってあげてくださいね!